【09】

Healthcare 1

私の小学校時代の話

みなさんも学生時代には経験したであろう尿検査

先生 「明日の朝、起きたらすぐおしっこを容器に入れ、忘れずに持ってきて下さいね」

生徒 「はーい、わかりましたー」

各自に手渡された尿検査のプラスチック容器

まるで醤油さし

悪ガキである私は、何かウケ狙いで違うものでも入れてみようか…なんてコトばかり考えていた

翌日になり普段通りに起床しトイレで用を足す

ジョロジョロ…

ほわぁぁ

あ、おしっこから湯気出てるや…

ブルブルッ

おお、武者震いだ

なんで寒い日におしっこすると震えるんだろ?

そういば…あれ?

何か忘れてる

何だっけ?

何か重要なコトだったような…うーん

はっ!?

やべぇ尿検査!

ああ、もう出終わっちゃう… 

チョロ…チョロ…チョ

ははは 終わったよ、何もかも…

髪の毛を真っ白にしてボクは椅子にうなだれる


「どうしたの?」

ふと顔を上げると優しいママ(ステファニー)が微笑みかけている

「ママひどいんだ、ジャイアンがボクをイジメるんだ。ボク悔しくって…」

いや、これはのび太だし、うちのママはステファニーでもない。真面目に話を続けましょう

「どうしたの?」

ふと顔を上げるとガンタンクみたいな母親が立っている

「朝一で尿検査を取らなきゃいけないのに、おしっこ出しちゃった…」

「わかったわ、お母さんのを持っていきなさい」

「えっ!?」

…2分後

「ほら、これで大丈夫だよ」

「うん、ありがとう」

家族っていいな。困った時にはすぐ力になってくれる

生暖かい母の尿が入った容器を握り締め、無事提出を済ませた

** 数日後 **


「はい、それじゃあ先日の尿検査の結果が出ました。みんな健康でした」

「うわ〜い、やった〜」

…コイツら平和だな

飛び上がって喜ぶ程でもないだろ

「はい、じゃあ気をつけて帰って下さい、さようなら」

「先生さようなら!」

自分のランドセルを背負い、気の早いものは公園を目指して走り出している

私もランドセルへ教科書を仕舞い始めた、と

「ケン君、ちょっと」

「はい、先生。何ですか?」

「みんなの前では言いにくかったの…コレ明日持ってきて」

「はあ…」

そっと手渡された袋を見つめた

!?


冗談抜きに息が止まった。その袋にこうあった





血尿 再検査



これぐらいの漢字であれば私でも読める

特大ハンコで押された血尿の二文字は、例え10メートル離れても見間違うことはない

「うわぁ ケン君 再検査だぁ〜 ケツニョウって書いてあるぞ」

クラス中に響き渡るバカの声で一躍私は人気者

ちっ ハンコでか過ぎなんだよ 役所もちったあ 気を使えよ!

「お前、おしっこ赤いのか?ん?ぎゃはは…」

本当に子供って人が傷つく事を平気で言うから始末におえない

もちろんこのバカは私の鉄拳10連コンボを決め始末しておいた

自分が忘れずにしていればこんなコトにはならなかった

冗談じゃねぇ、母親の一番絞りでバカにされた挙句、再検査になるなんて…

神様、ちょっとヒドクない?(コギャル風に)

神様、ねぇちょっとヒドクない?(コギャル風に)


てか、こんな血尿だけに赤っ恥ネタいらねーし


自宅に帰って母親に話す

みんなにバカにされたことは胸の内に仕舞いこんで

不安になった母は、その足で病院へ出向く

一時間経過 帰って来ない

二時間経過 帰って来ない

三時間経過 音沙汰なし 弟も腹が減ったと騒ぎ出す

四時間後 ジリリリリン ジリリリン 電話が鳴り響く

父  「ああもしもし、おうお前か、うんうん、えっ、そ、それで…ああそう…」

弟  「ねぇねぇ お母さんから?」


父  「…母さんな…今日から入院だ

兄弟 「えっ!?」


それから二週間、母の姿を自宅で見ることはなかった

女性特有の病気で、即手術、もう少しで手遅れになるところだった

自営業のため定期的な健康診断がない両親

友達にバカにされた事より、母が元気になった事がひどく嬉しかった事を今でも鮮明に憶えている


これからも、ボクは家族の尿検査を進んで行なおうと思った

病気は早期発見早期治療、これだなと
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